涙を幸せに変える24の物語

涙を幸せに変える24の物語

はじめまして。私は福岡県に住む○○といいます。
突然のお手紙で失礼だと思ったのですが、『大切な人に贈りたい24の物語』を読んで、どうしても伝えたいと思い書いています。
中山先生の元へ届くと、とてもうれしいです。

私は3月1日に付き合っていた彼を交通事故で亡くしました。
今では4週間経つのですが、まだまだ受け入れるには時間がかかりそうです。
今日(3月28日)1年ほど前に買った『大切な人に贈りたい24の物語』を読み返し、改めて感じたこと、気づいたことを手紙で伝えたいと思いました。
彼とは出会って、すぐに付き合い始め、もうすぐ2年というところでした。

たったの2年ではあるのですが、毎日、365日一緒にいました。お互い実家暮らしでしたので、限りある時間、常に一緒でした。
この2年間のあいだ、私がつまらないことで怒る以外にケンカというケンカはなく、今でも印象に残るのは、彼は私と居る時、常に笑顔だったことです。
私は仕事やプライベートでの感情をよく顔や態度に出すことも多く、彼を困らせることも多かったのですが、彼はその時でもだまって側に居て、笑わせてくれました。
その毎日の中で、私は彼のクセなどを不満に思い、「ここがイヤ!こうして!」とか、今考えてみればたいしたことでもないのによく彼にいっていました。
その時に、「私にも不満があるなら言って!直すから!」と言うのですが、彼はいつも「君はそのままで良い。不満なんてない」と言うのです。
それを聞くといつも「何も考えていないんだ…」と思っていました。

3月1日、彼は仕事がお休みで、自営業をしている私の父の仕事を、朝の5時から文句も言わず手伝ってくれました。
それから8時に手伝いを終え、私を迎えに自宅まで来てくれ、職場まで送ってくれました。
「帰りも迎えにくるから!夜の7時にここで待ってる」と言って、別れ、私は仕事場に行き、それが彼との最後でした。
その時は当たり前に夜になればいつもどおり迎えに来てくれる、と思っていたので、「ありがとう」の一言も言えず…。

仕事が終わり、待っているはずの場所に彼の車が停まっていない瞬間、私はふるえが止まらなくなり、そこから家まであまり記憶がありません。
彼のケータイに電話を何十回かけてもつながらず、彼の家へ行こうとしていた時、彼の家族から電話が入り、「バイクで事故して亡くなった」と言われました。
それは彼が息を引き取ってから、3時間経った後でした。
その日や次の日は、ただ事実を受け入れきれず、泣き続けました。生まれてこんなに泣いたのは、これまでも、これからもあの日だろうというくらい。
葬儀が終わり、彼の身体とお別れをし、今は彼を愛していた人々の心の中に生き続けているのを毎日、実感します。

彼が亡くなって、私は本当の幸せというものを気づかされました。
まずは、私の大切な家族です。
自分の体を張って守ってくれる、両親。
何も言わずにいつも一緒に居てくれる姉ちゃん、妹。
いつもは一緒に暮らしていても、気付くことが出来ず、感謝の言葉も言えなかった。
今では毎日、心から素直に感謝を伝えています。
次に彼の家族、友達。
私は付き合って2年で、結婚もしていないのに、彼のご両親やご兄弟は、今でも心配してくれ、時々、連絡を入れてくれます。
彼の亡くなった日、彼が家へ帰ってきた時、もう夜の11時を過ぎていたにもかかわらず、気が済むまで、彼の横に居させてくれました。次の日も。
納棺の際も他人の私に身体を触らせてくださり、洋服も選ばせて、着させてくれました。
最後の最後まで、彼の側に居させてくれて、触らせてくれて、話させてくれました。
今では、そうさせてもらった事で、自分の心の中で彼との身体との別れをきちんと行うことができたと思い、本当に感謝しています。

本当に優しかった彼。
ご両親や家族の優しさに触れ、こんな幸せな家族で育ったからあんなに優しかったのだと。
彼の優しさに触れるようで、今でも彼の家族に会うと優しい気持ちになります。

そして、友達。
今でも彼が亡くなったことを伝えていない友達はたくさんいます。
だけど、伝えようと思い、泣きながら連絡した友達もいます。その友達は私の家まで車で約2時間、高速を使って来ないといけない所に住んでいるにもかかわらず、何も言わず、家まで来てくれました。
そして、毎日、メールや電話をくれる友達。泣いている私の側で、だまって横に居てくれます。
こんな、普段の日常では気づかない、私が気づくことのできなかった人の優しさ、愛情に今では毎日、包まれて、感謝して生きています。
彼が亡くなった時、この世で1人残されてしまった孤独を味わいました。
今では私の周りにはたくさんの優しさを持った人が居る。幸せだと思えます。

それから、1番、私を幸せにしてくれた彼。
本当は今でも会いたいし、声が聞きたいし、名前を呼んでほしいし、触れてほしい…。亡くなる時、側に居たかった…。

だけど、私はすごく幸せです。
きっと彼も幸せだったと私は思ってます。
どうして、彼を失って「当たり前に毎日一緒に居ることの幸せ」に気づけなかったんだろう。今でも思います。
ただ、彼は当たり前の幸せに気づいていたような気がするんです。
だからといって、私に求めるのではなく、無償の愛?というのか、本当にただただ、私に愛情を注いでくれました。
それがあったからこそ、私は今、幸せだし、生きていける。そう思います。

彼の「求めない」本当に素晴らしい人と出会えた、愛してもらったと毎日毎日、胸が一杯です。
その分、寂しさはもちろん大きく、まだ泣くことも多いですが、幸せを感じる涙なので、彼も笑って泣いてくれると思います。
私は相手に求めることばかりで、本当に大切なことが見えてなかった。
だけど今度は私が誰かに愛情を注ぎたい。本当にそう思います。
彼に愛してもらった分、私は誰かを愛したい。

彼を忘れることは一生ないと思います。本当にありがとう。
私は生まれて初めて、「愛」というものを知りました。
そして、「命」というものの大切さ、はかなさも。

後で分かったのですが、ホワイトデーのお返しで、彼はお店を予約してくれていました。
3月15日の19時から…。あと2週間だったのに。
きっと彼のことだから、私の喜ぶ顔が見たくて、教えてくれなかったんだろうな…。彼がものすごく、愛おしいです。
事故にあった3月1日の2日前、2月27日、なぜか、ホワイトデーのお返しをくれました。
ずっと私が欲しがっていたウォークマンでした。
その時は「何で早くくれるの?」と聞くと、「早く渡したいんだ。そんな気がする…」。深い意味はなかったかもしれませんが、最後のプレゼントでした。
ウォークマンをくれたから、ご飯なんて行かなくてよかったのに…。

人を喜ばせるのが好きな彼。
本当にたくさん、たくさん思い出を残してくれました。
今までは毎日の中で不満ばかりを見つけてはマイナスに考えていた私。
彼は毎日の中で楽しみを見つけ常に笑顔。本当に素敵な人です。
私もそういうふうに生きたい。毎日に楽しみを感じ、笑顔で。そう思っているのは私だけではなく、私の家族、友達もです。
今回の経験で私の周りにいる人が変わりました。彼の死からみんなたくさんのことを学んだと言ってくれます。
彼もそう言われて喜んでいるだろうし、そう思われる彼を尊敬します。

人との別れはとても辛いです。
だけど、人に対する優しさを手に入れました。人から愛される喜びも知りました。人を愛することの素晴らしさを知りました。

本当に本当に幸せです。
彼が大好きです。
この経験を無駄にすることはできない。
私は生きていきます。彼の分まで。

こういった手紙は初めてで、よく伝えられていないかもしれませんが、読んでいただけたらありがたいです。

3月28日
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